既存住宅売買瑕疵保険と既存住宅・リフォーム市場の活性化に向けて
既存住宅売買瑕疵保険の開発背景としくみ
平成12年4月に施行された住宅の品質確保の促進等に関する法律では、新築住宅の瑕疵担保責任として構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分について、売主または請負人(以下、「売主等」)が買主または発注者に対し10年間の瑕疵担保責任を負うこととされています。ところが、その後の構造計算書偽装問題の発生によって、新築住宅の売主等の財務状況等によって瑕疵担保責任が十分に履行されない場合、住宅取得者が極めて不安定な状態に置かれることが明らかとなりました。
そこで、平成21年10月に特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律が全面施行され、これ以降同法に基づき、新築住宅については住宅瑕疵担保保証金の供託、または住宅瑕疵担保責任保険法人(以下、「保険法人」)との保険契約による売主等の資力確保が義務付けられるとともに、住宅瑕疵担保責任保険の引受主体及び紛争処理体制の整備が行われました。
一方で近年、住宅の一次取得者層である30歳代の平均年収は減少傾向にあり、住宅流通量に占める既存住宅の流通量が増加傾向にあります。また、既存住宅購入やリフォームに係る消費者のニーズとして、「何か問題があったときの保証」、「安心できる物件か判断するための検査・診断」、「住宅の履歴情報が分かること」、「信頼できる事業者を選択するための情報」、「信頼できる相談窓口」等が挙げられているところです。
こういった消費者のニーズを踏まえ、国土交通省では保険法人とともに既存住宅の売買やリフォーム等に係る保証の拡大に向け、任意保険の開発を実施してきました。現在既存住宅売買瑕疵保険として、(1)住宅の売主が宅地建物取引業者(以下、「宅建業者」)である宅建業者販売タイプ、(2)個人間の売買の際、住宅の検査・保証を行う検査事業者が保険に加入する個人間売買タイプ、(3)売買の仲介を行う宅建業者などが保険加入する仲介事業者タイプ(平成28年4月認可)の3種類の商品が用意されています。
既存住宅売買瑕疵保険の活用状況
既存住宅売買瑕疵保険については、平成21年より順次商品認可がされています。平成27年度までの累計申込件数は、宅建業者販売タイプで25.3千戸、個人間売買タイプで5千戸となっており、近年15~17万戸で推移している既存住宅の流通戸数に対する割合は5%程度と、まだまだ低い活用状況です。
また保険料については、保険期間、保険金額により異なりますが、平均3~4万円となっており、契約者の特性による割引や各種特約も用意されています。
既存住宅・リフォーム市場の活性化に向けて
平成28年6月3日に、宅地建物取引業法の一部を改正する法律が公布されました。(内容の詳細については、vol.88「宅地建物取引業法の改正案」についてを参照)
改正法で説明を求めることとしたインスペクションは、既存住宅の現況を第三者が専門的・客観的に調査することにより、売主・買主双方が安心して取引を行うことができる環境を整備するために導入したものです。そしてインスペクション結果を活用し、既存住宅売買瑕疵保険への加入がスムーズになるような仕組みとすることを考えています。
上記宅地建物取引業法の一部を改正する法律の全面施行は、来年平成30年の4月1日を予定しています。この改正により建物の質を踏まえた購入判断ができるようになるとともに、既存住宅売買瑕疵保険への加入が促進されることで、購入後も安心して居住できる環境の整備を目指しています。
国土交通省 住宅局住宅生産課住宅瑕疵担保対策室